Long Cool Woman in a Black Dress

今度の公演でご披露する手順は、学生の頃から長い時間をかけて作り上げてきたものです。演技をする機会がある度に少しずつ改良を加え、都合3回のメジャーバージョンアップを行いました。その都度衣装も作り変えていったのですが、今回はその衣装の変遷についてお話します。

まず、現在の衣装ですが…よく「キモノ」と間違えられます。しかし、実を言うと全くもって洋裁の技法のみで作った「洋服」なのです。ジャケットの前身頃の重なりが深く、和服とよく似た形のラップスカートをはいているため、キモノっぽく見えてしまうようです(女性用の洋服として襟を重ねている、即ち左前なので、和服としては不吉な着こなしです…)加えて、演技で使用する道具に和風なものが多いのも誤解を招く一因かもしれません。なので「和妻」(日本の伝統芸能としての手品)をやっている、と勘違いされてしまうことすら多々あります!

ジミなパンツスーツの衣装のデザイン画

そんなことはともかく、この演技を始めた遥か昔の頃の衣装は、何の色気もない、上下黒のパンツスーツでした。当時はソレがイケてると思っていたのでしょうけれど、今思えば地味なことこの上ありません。

ところで、お金が余り自由にならない若いアマチュアのマジシャンが、「容易く手に入り、なんとなく無難に収まる」というだけの理由で地味な黒いジャケットに身を包んでいるのを見かける度、もう若干工夫を凝らしたらいいのに、と思うことがあります。かく言う私はどうだったかと言うと…「このデザインで」「この生地を使って」「こんなシルエットで」と、お金をかけないなりにもとことん自分の嗜好を反映させ、こだわりまくって自作したのが上記の結果だったのですから、そもそも工夫の凝らし方からして間違っていたようです…

というわけで、幾ら他人から「ジミ」だの「色気がカケラも感じられない」だの言われようと、大体色気など表現しようとも思っていなかったし、本人が大満足してあつらえたものなのですから、衣装を変える必要性など露ほども感じなかったワケです。しかし本人は気付かずとも客観的に見て最善ではない衣装であったため、依然、外野はうるさい。そこで「じゃーまー、スカートでも作ってみるか」と大した工夫もなく別の衣装をこさえたものの、本人が必然性を感じてホンキを出して作ったワケではないため、余り出来が良くはならなかったのです。

もっさりした衣装

その出来の良くない2作目の衣装がコレ!→

ジャケットは前の衣装のものを流用しており、スカートのみを新調しましたが…上着と同じくアシンメトリーのデザインで、ドレープをたっぷり取ったひらひらのスカート。いまいちジブンのキャラに合っていません。周囲の評判も特に芳しくはなく、とあるコンテストに出た時、審査員の女性に、こうこき下ろされました。

 

「なんだか『もさっ』っとしてるのよね」

 

(ー_ー+)

 

俄然、火がつきました!
私は褒められるよりも、けなされる方が伸びるタイプなのでしょうか???

このきっかけを得て、いまだかつてないほどデザイン画を描きまくり、試行錯誤を重ねた上、縫い上げたのが今の衣装です!

ジャケットは以前と同じく合わせが深い形状ですが、襟の形と全体のシルエットを変えました。襟足ががっつり見えるように後ろの開きを大きくし、全身真っ黒けだったのをやめ、下は鮮やかな紫のロングタイトに変更。スリットを大きくあけて、いやらしくない程度に足が見えたりもします(^_^;)

衣装の改変と同時に手順も大幅に作り変え、半年足らずで新衣装による全面リニューアル手順を作り上げましたっ!あの時注いだ情熱と、シゴトの仕上がり具合の良さは一体なんだったのでしょうっ?

今同じことをやれと言われても、到底出来ないと思います…

※記事タイトルはBGMに使っている曲のタイトル(ROCKAPELLAによるアカペラバージョン)。オリジナル曲は70年代のブリティッシュポップらしいです。

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category: 羽衣伝説